ワインズバーグ、オハイオ
著者: シャーウッド・アンダーソン(著)上岡伸雄(訳)
:::目次(文庫):::
いびつな者たちの書
手
紙の玉
母
哲学者
誰も知らない
狂信者 ― 四部の物語
I
II
III 身を委ねる
IV 恐怖
アイデアに溢あふれた人
冒険
品 位リスペクタビリティ
考え込む人
タンディ
神の力
教師
孤独
目覚め
「変人」
語られなかった嘘うそ
飲酒
死
見識
旅立ち
訳者あとがき
解説 川本三郎
"こうしたことのどこが面白いかというと、それは作家の目の前を行く人々の姿にあった。みんないびつな者たちなのだ。"
"一生を書くことに費やし、頭のなかが言葉でいっぱいになっている老人は、この件についてこれから何百ページも書くことになる。それを読者は目撃するのだ。"
"「ここから出て行くよ」と彼は言った。「どこに行くかはわからないし、何をするかもわからない。ただ、出ていくんだ」"
"アリスのほうも、自分の狭苦しい人生に美しいものがほしいという欲求に騙され、どんどん興奮した。"
"アリスのほうも、自分の狭苦しい人生に美しいものがほしいという欲求に騙され、どんどん興奮した。"
"「私の願いがかなうことはない。絶対に幸せになれない。どうして自分に嘘をつくのだろう?」と彼女は叫び、それとともに奇妙な解放感が訪れた。"
"「私の願いがかなうことはない。絶対に幸せになれない。どうして自分に嘘をつくのだろう?」と彼女は叫び、それとともに奇妙な解放感が訪れた。"
"「どうして何も起こらないの?どうして私は一人でいるの?」"
"それから壁に顔を向け、一つの事実を無理やりでも直視しようとした。ワインズバーグにおいてでさえ、多くの人々が一人で生き、一人で死なねばならないという事実である。"
"このとき彼は薄暗い廊下から窓の外のパン屋を見つめ、自分の心も何かにとことん揺さぶられることはないものかと思った。"
"「僕はこの町を出て行くよ。何をするかはわからないけど、ここを出て働くんだ。コロンバスに行こうかと思う」彼は言った。"
"町でいちばんの金持ちの娘、そしていちばん魅力的な娘のお気に入りとして選ばれたというのは、素晴らしいことだと考えた。"
"彼女の行動に困惑し、どうしたらよいのかわからなかった。彼はずっと町の人々の生き方に困惑し、どうしたらよいのかわからなかったのだが、彼女もまたその町の産物なのだ。"
"「どこか都会に行き、ビジネスを始めるんだ」と彼は言った。"
"「(略)単なる言葉の商人になっては駄目。学ぶべきは人々が何を考えているかであって、人々が何を言うかじゃないの」"
"自分が何を言いたいわかっていたが、絶対にそれを言えないこともわかっていた。"
"バーテンは結婚する気になっていたし、妻を養うために金を稼ごうという努力を始めていたのだが、性格があまりに単純すぎて、自分の意図することをうまく伝えられなかった。"
"「死」と彼はつぶやいた。「夜、海、恐怖、美」"
"「欲望」と彼は言った。「欲望と夜と女」"
"彼がこうした不幸のすべてに終止符を打てると思った考えはとても単純だった。「ここから出て行こう、家から脱出するんだ」と彼は自分に言い聞かせた。"
"その秋の夜、ワインズバーグ近郊の田園地帯の美しさは、レイには荷が重すぎた。そこには美しさしかなかったのだ。それが彼には耐えられなかった。"
"「恥ずかしい思いをするのは構わないんだ、新しいことがわかるようになるからね」と彼は祖母に言った。祖母は何の話だかさっぱりわからなかったが、彼のことをとても愛していたので、理解してもしなくてもどうでもよかった。"
"「(略)ものすごい速度で走り、そのままどこまでも走り続けたかった。町から脱け出し、服からも、結婚からも、体からも、すべてから脱け出したかったんです。(略)」"
"過去の物事の幽霊が意識に入り込んでくる。自分自身の外から囁き声が聞こえてきて、人生には限界があると告げる。自分自身と未来にとても自信があったのに、まったく自信がなくなる。"
"そのとき抱いた気持ちは決して忘れられないはずだ。そこらじゅうに幽霊がいる。と言っても、死者のではなく生者の幽霊。"
"自分たちのこれまでの気分によってなぜか気恥ずかしさと浄められた感覚を抱き、彼らは男と女ではなく、少年と少女でもなく、興奮した小動物となった。"
"(略)彼がどんな冒険を始めようとしているのかも知っていたが、何も言わなかった。町を出て都会を目指すジョージ・ウィラードのような青年を千人も見てきたので、トムにとってはあまりにもありふれた出来事だったのである。"